AI個人開発の技術スタック

国内VPS比較

デプロイの基礎で挙げた「2コア/メモリ2GB/NVMe 200GBクラスで月770円〜」の元ネタを含め、国内の主要VPSを同じ2GBクラスで比較します。ただし安さと引き換えに、Terraformでの一貫管理とアンチアフィニティ(冗長構成の分散配置)は期待できません。

2GBクラスの料金比較

  • Kagoya Cloud VPS:月770円(日額28円上限)、200GB NVMe SSD。全プランNVMeで、この価格帯では最安・最大容量。インターネット回線とローカルネットワークは最大1Gbpsの共有回線(ベストエフォート)
  • ABLENET VPS(L1):月968円(年払い契約時)〜1,130円(更新後)
  • ConoHa VPS:1か月契約で月1,259円、100GB。Kagoyaよりストレージが半分。インターネット回線は100Mbps共有で、VPS 3.0では有料オプションにより300Mbpsへ拡張可能
  • シンVPS(2GB標準):月1,530円、150GB NVMe。2026年9月1日に料金改定が予定されているため、最新価格は公式サイトで要確認
  • Xserver VPS:36か月契約で月990円〜、通常契約だと月2,640円。50GB NVMeとやや小容量
  • さくらのVPS:石狩リージョンで月1,700円前後、100GB(NVMeではない通常SSD)。大阪・東京リージョンはさらに高くなる

比較のため、東京リージョンを選べる海外勢も並べます。

  • Vultr(2GB):月10ドル、55GB SSD、2TB帯域込み。東京・大阪リージョンあり
  • Akamai Cloud(Shared CPU 2GB):月12ドル。東京・大阪リージョンあり
  • Amazon Lightsail(2GB):月12ドル、60GB SSD、3TB帯域込み。東京リージョンがあり、固定月額で使えるAWSのVPS
  • Contabo(Cloud VPS 4):東京リージョンあり。最小プランでも4vCPU/メモリ8GB/100GB SSDと大容量ですが、2GBクラスとの単純比較はできません。表示価格が長期契約を前提としている場合や、日本リージョンの追加料金があるため、注文画面の契約期間と総額を確認してください
Lightsailは利用制限に注意:月12ドルの2GBプランは2vCPU表記ですが、持続的に利用できるCPU性能のベースラインは各vCPUの20%で、それを超える処理は蓄積したバースト容量を消費します。CPU負荷が長時間続くAPIやデータベースでは、表記上のvCPU数だけで性能を判断できません。また、オートスケーリングはなく、スペック変更はスナップショットから別インスタンスを作る方式です。マネージドDBも標準プランは冗長構成ではなく、本番向けの高可用性プランを選ぶと費用が上がります。手軽な小規模構成には向きますが、継続的な高負荷や本格的な冗長構成が必要なら、EC2・ECS・RDSを検討します。
Contaboは解約に注意:サーバーを削除するだけでは解約にならず、Customer Panelから別途解約申請を行う方式です。申請後も表示された終了日までは契約が継続します。また、契約期間によっては終了日の4週間前までに申請しないと当初と同じ期間で自動更新されるため、長期契約ほど解約時期の管理が大変です。解約申請後は、Customer Panelに終了日が表示されていることまで確認してください。

ストレージ容量と価格だけ見ると国内のKagoyaが頭一つ抜けていますが、後述するTerraform対応とアンチアフィニティまで含めると、話は単純ではありません。

弱点1:Terraformで一貫管理できない

この手引のIaCの全体像でも触れているとおり、国内の安価なVPSはCloudflareやGoogle Cloudほどterraform対応が進んでいません。ConoHa VPS 3.0には公式Terraformプロバイダーがありますが、現時点ではバージョン0.1.0のベータ版です。管理できるのはサーバー、SSHキーペア、ボリューム、セキュリティグループとそのルールに限られ、データソースも提供されていません。プライベートネットワークの作成やサーバーへの接続にも対応していないため、WebサーバーとDBサーバーを閉域網で接続するような本番構成をTerraformだけで再現できず、実用上不十分です。

ここで挙げた国内6社は、VM、ネットワーク、ストレージまでTerraformで一貫管理できる状態にはなく、手動操作や事業者独自APIを併用し、サーバー内部だけをAnsibleで管理する構成にならざるを得ません。対してVultr(vultr/vultr)、Akamai Cloud(linode/linode)、Amazon Lightsail(hashicorp/aws)はTerraformプロバイダーが成熟しており、VM本体からTerraformで管理できます。詳細はGCPより転送量を抑えたい人向けの記事を参照してください。

弱点2:アンチアフィニティが無い

アンチアフィニティは、冗長化のために複数台立てたサーバーを、意図的に別々の物理ホストへ配置する仕組みです。これが無いと、Webサーバーを2台に分けて冗長構成を組んだつもりでも、両方が同じ物理ホスト上で動いてしまうことがあり、そのホストの障害時に2台が同時に停止する可能性があります。

ConoHaは分散ストレージと自動フェイルオーバーを採用:現行のConoHa VPS 3.0は、NVMe SSDの分散型ストレージと、物理ノード障害時にVMを別ノードへ退避する自動フェイルオーバーを標準搭載しています。GMOの技術資料にはCompute NodeがCephストレージへ接続されているとの記載もありますが、現行製品の全リージョン・全プランでCephを使っているかまでは公表されていません。物理ホスト障害からの自動復旧は期待できる一方、利用者が複数のVPSを別ホストへ明示的に配置するアンチアフィニティは確認できないため、障害時の同時停止を避ける配置までは保証されません。

AWSにはプレイスメントグループ、Akamai CloudにもLinodeを別ホストへ分散配置するアンチアフィニティ機能(最大5台までのグループ)が公式に用意されています。一方、ここで挙げた国内VPS各社には、そうした配置制御を公開APIやドキュメントで案内している事業者が見当たりません。Vultrについても、アンチアフィニティに相当する機能は公式ドキュメント上で確認できませんでした。複数台構成を組んでも、実際に物理的に分散しているかを利用者側で確認・制御する手段が無い、という前提で設計する必要があります(Akamai Cloudを除く)。

結論:まず試すには十分、本番の冗長構成には不向き

国内VPSの第一候補はKagoya Cloud VPSです。月770円で200GBのNVMe SSDを利用でき、この価格帯ではストレージ容量と費用のバランスが最も優れています。回線も最大1Gbpsの共有・ベストエフォートで、ConoHaの標準100Mbps共有より余裕があります。次点はConoHa VPSです。Kagoyaより高いものの、NVMeの分散型ストレージと自動フェイルオーバーを標準搭載しているため、コストだけでなく物理ノード障害への耐性も重視する場合に向きます。ただし、標準のインターネット回線は100Mbpsの共有帯域で、他のVPSへ影響するトラフィックは制限される場合があります。大容量配信や継続的に帯域を使うサービスでは、この制約を考慮する必要があります。個人開発の検証段階や、1台構成でまず動かしてみる用途であれば、国内VPSの安さは十分に魅力的です。この手引のデプロイの基礎で紹介している構成も、最初はこの前提で組んでいます。

一方、本番で複数台の冗長構成を組み、物理障害への耐性まで求める場合は、Terraformで一貫管理できるVultrやAkamai Cloud、特にアンチアフィニティまで欲しいならAkamai CloudやAWSのようなクラウドの方が設計しやすくなります。「安いから」で最後まで押し通さず、可用性要件が出てきた段階で見直す、というのが現実的な使い分けです。

本番環境の選び方:費用を抑えるならAkamai CloudかVultr、安全性と運用負荷の低さを優先するならGCPかAWSを推奨します。GCPやAWSではマネージドデータベースを利用でき、バックアップ、冗長化、障害復旧を自前で設計・運用する範囲を減らせるためです。国内VPSを本番環境で使うなら、日次バックアップの場合は障害のタイミングによって最悪24時間分のデータを失う可能性があります。そのデータ損失を受け入れられるシステムかどうかを、採用前に確認してください。

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